文芸誌「O(オー)」43号に掲載されている小説3編を読んだ。一時に3作も読むと、ここのところ、記憶力が薄れてきているので、それぞれの感想はかけないが、3作とも引き込まれ一気に読んだ。
佐武 寛『父の越えて来た歳月』。
サブタイトルは英文で UNCONDITIONAL SURRENDER OF JAPANN ---とある。「日本の無条件降伏」という意味だろうか。
真理は料亭の女将で二人の女の子の母親。父から送られてくる詩、手紙を介して、作者の戦争体験、歴史観、世界観が展開される。読み応えのある作品である。
内村 和『りんごの花咲く頃』
主人公、内藤 司は今、肝硬変を患っている。親戚縁者との付き合いも、親の介護もすべて妹に任せてきたのだが、司にしてみれば、常に体を張って懸命に生きてきたという思いはある。
今の住居を引き払い、父の建てた今では、廃屋状態の故郷の家に帰ることにする。7年一緒に暮らし、家を出て行った妻のこと、など今までの経緯が語られる。故郷の家には今では珍しくなったリンゴ国光が植わっている。7年同居した女性真理子は、既になくなっていたが、父は折りにふれリンゴを送り続けていた。真理子はタイ生まれの孤児を幼女にして育てたいた。司は、真理子に侘びる気持で、一人ぼっちの幼女「比呂」に財産分与を決意する。それが司の締め括りの、三尺玉には及びもつかないが、花火だった。
渡辺たづ子『水の井戸』
祖母の一日は神ごとに始まって、神ごとで終わる。私の祖母はシャーマンである。
父は母親である祖母を避けていた。それは祖母が神ごとをする人だからだ。祖母が神ごとをするようになったのは、
四十代の半ば頃からという。祖母とともに過した人間ドラマ興味深く読んだ。
ここまで来て、小説の感想を書くことの危険さを感じている。書いた私の文章の中に本人の軌跡もいやおうなく入り込んでしまうことである。
転載・原文は金児至誠堂